FactFASHION

真実を着る、誤解を脱ぐ

あまり知られていない、
服と肌の関係

皮膚科医専門医 NTT東日本関東病院 皮膚科 部長

五十嵐敦之先生

乾癬などの皮膚疾患を抱える患者さんに加え、敏感肌や乾燥肌などの肌トラブルを抱える人の多くを悩ませているのが「服選び」です。肌へのストレスの少ない服とは、どのようなものなのでしょうか。皮膚科専門医のNTT東日本関東病院 皮膚科 部長 五十嵐敦之先生に、服と肌の関係性についてお聞きしました。

乾癬などの皮膚疾患を抱える患者さんに加え、敏感肌や乾燥肌などの肌トラブルを抱える人の多くを悩ませているのが「服選び」です。肌へのストレスの少ない服とは、どのようなものなのでしょうか。皮膚科専門医のNTT東日本関東病院 皮膚科 部長 五十嵐敦之先生に、服と肌の関係性についてお聞きしました。

衣服による肌トラブル、その原因は?

皮膚のバリア機能が低下すると、皮膚が赤くなったり、かゆみが出たりなどの肌トラブルを引き起こします。その原因はさまざまですが、大きくは外部からの刺激(外的要因)と、体の内側の状態(内的要因)によるものに分けられます。五十嵐先生によると、なかでも〈衣類〉や〈汗〉による肌トラブルは外的要因として日常的に見られるといいます。

「衣類は、肌に直に触れることで摩擦が起こり、その刺激が皮膚の赤みやかゆみを誘発することもあります。たとえば、デニムのような厚くて硬い生地や、締め付けのある造りなどは肌への刺激が強く、トラブルが出やすい傾向にあります。また、肌が乾燥状態にあると、ちょっとした刺激でもかゆみが出やすい人もいます。そのため、乾燥する秋冬は特に、タートルネックやウールのニットなど下に、やわらかな触感で刺激の少ないものを着るなど、比較的硬い生地の衣服が皮膚に直接当たらない着方をするといいですね。

一方で、汗はそのものが原因というわけではありません。汗をかくこと自体は、体温調節や皮膚の乾燥を防ぐなど、人間にとって必要なものです。ただし、汗の中には塩分や老廃物などさまざまなものが入っていて、それらが皮膚の常在菌によって分解されると、刺激物質となり、炎症を引き起こします。そのため、汗が体に残ったままの状態や、汗をかいて服の中が蒸れた状態をつくらない工夫も必要です。汗をかいたらそのままにせずにシャワーを浴びたり濡れタオルでやさしく汗を拭きとったり、服の着方で汗蒸れの状態を調節したりするようにしましょう。」

肌への負担を減らす「服選び」のコツ

衣服や汗が肌トラブルに関係していることがわかったところで、具体的にどのようなポイントで服選びをすればよいのでしょうか。

「合成繊維や羊毛はかゆみや刺激が出やすいといわれていますが、理由付けに関してはエビデンスは不十分です。※1 ある報告では、合成繊維の1種であるエチレンビニルアルコール製の下着で検討した結果、改善の程度が良かったと報告されています。※2 ※3
そういったことを踏まえて僕がいいたいのは、素材にとらわれすぎず、摩擦の少ない“平滑性”や、汗を溜め込まない“吸湿・速乾性”にも着目してほしいということです。
特に、肌に直接つける下着や肌着は、そういった点をポイントに選ぶのがおすすめです。今は縫い目のないシームレスな造りや、汗をコントロールする機能性素材など、肌への負担が少ない選択肢もあるので便利ですよね。汗は夏場だけ多くかくと思われがちですが、実は、秋冬も厚着になるので体の熱がこもりがちです。そういった時も、下着でうまく調節すると汗蒸れを軽減することが可能です。
また、前述の通り、衣服による締め付けも皮膚を刺激する要因の一つなので、ぴちっとした体を締め付けるデザインは、なるべく避けていただきたいです。……とはいえ、おしゃれの観点でいえば、そればかりを押し付けるわけにもいきませんので、難しいところですね。」

快適に、自分らしくおしゃれを楽しむ!

服は毎日身につけるものだから、肌触りや着心地はもちろん、着る喜びやおしゃれの楽しさも大切にしたいもの。五十嵐先生も、「肌触りがよくて、自分がいいと思ったものを着てくれればいい」と話します。

「皮膚科医としては、肌への刺激が少ないものを選んでいただきたいですが、どのような衣服を着るかによっては、気分を上げたり前向きになれたり影響を与えるものです。僕たち医師はそこを補ってあげることはなかなかできないので、肌トラブルを抱える人に寄り添う衣類があると心強いですね。」

普段の服選びに、“平滑性” “吸湿・速乾性”という視点を加えて、肌に負担をかけない快適なおしゃれを楽しんでみてはいかがでしょうか。

引用文献

※1
Mason R.Fabrics for atopic dermatiti.J Fam Health Care 2008;18:63-5(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18512638/
※2
Yokoyama Y,et al.Ethylene vinyl alcohol(EVOH)fiber compared to cotton underwear in the treatment of childhood atopic dermatitis:a double-blind randomized study.Indian Pediatr 2009;46:611-4.(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19430059/
※3
アトピー性皮膚炎の小児を対象