乾癬の疾患啓発プロジェクト

INTERVIEW

「乾癬は感染しない」——
HIKANSEN project 
道端アンジェリカさんインタビュー

たくさんのわかり合える
人たちがいる。
そう思って、
前向きな一歩を踏み出してほしい

雑誌やテレビ、ファッションショーなどで活躍中のモデル、道端アンジェリカさん。2017年5月にSNSで「乾癬(かんせん)」であることを公表し、大きな反響を呼びました。見た目に症状が現れる「乾癬」は、職業上、肌を人に見られることが多いアンジェリカさんにとって、日々大きなストレスと仕事への不安としてのしかかっていたと言います。家族にさえ告白できなかった発症当時の苦悩から、公表後の心境の変化、今現在の乾癬との向き合い方を伺いました。

広がっていく症状に戸惑った発症初期

—— 「乾癬」を発症したのはいつ頃、どのような症状だったのですか?

アンジェリカ私が乾癬を発症したのは、今から5年ほど前、20代半ば頃でした。最初は10円玉、5円玉くらいの小さい発疹が肘と膝の裏に2カ所できて、何だろう?という程度で、そんなに気にしていませんでした。それが、徐々にその周りに小さくて似たようなのがポツポツと少しずつ広がっていきました。今は、割と落ち着いていて、頭皮や生え際に少し出るくらいですね。

—— ご自身の症状が「乾癬」かもしれない、と気づいたのはどういうタイミングだったのですか?

アンジェリカ「乾癬」っていう病気を知ったのは、昔からファンだった海外の女性タレントさんがきっかけ。彼女が出演しているリアリティー番組を観ていたときでした。番組の中で、彼女がカメラマンさんに「私、足に乾癬出てるんだけど、画像処理で消しといて」と、普通に言っていたんです。それで、「乾癬ってなんだろう?」って思って、インターネットで調べてみたら、「あれ?!私の肌に出てる症状と似てる!」と思って。それから「乾癬」という言葉を知り、調べるようになりました。

—— 一時、「乾癬」の症状が悪化した時期があったと伺いましたが。

アンジェリカはい。足を骨折して入院していた時期があって、退院してからもしばらく運動ができないストレスがあったせいか、二の腕とか、今まで症状が出たことのなかった太もも、お腹、背中にまで発疹が広がって……。特に背中は驚きましたね。私の場合、かゆみの症状がなかったのですぐに気づかなくて、たまたま鏡で背中を見たら、バーっと症状が出ていて、あれは結構ショックでした。これは何だろう、どうしようって、すごく悲しかったなぁ。

—— 病院に行こうと思ったきっかけは何だったのでしょうか? 体の各所に症状が広がっていったことも大きかったのでしょうか?

アンジェリカそうですね。皮疹がどんどん広がっていった時期は、もう本当に辛くて、毎日1人で泣いていました。とにかく自分の顔や体を見ることができなくて……。シャワーを浴びるときは電気を全部消して暗くしたり、出かけるときは毎日長袖のセーターを着たりして、周囲にも自分にも、肌が見えないように、隠すようにと生活していました。

でも、ちょうど症状がひどくなっていた頃、2週間後に雑誌で水着の撮影を控えていたんです。これはもう今までみたいにファンデーションなんかじゃ隠せないし、どうすることもできないと思って、病院に行くことにしました。

—— 病院で受診したとき、何と言われたのですか?

アンジェリカ病院に行く前から「乾癬」のことを調べていたので、何となくはわかっていましたが、先生に直接、「これは一生治らないよ、ずっと付き合っていくしかない」と言われたときは、やっぱりちょっと悲しくなりました。その覚悟はできていたつもりだったのですが……。

周囲の目を気にして疲弊していく毎日

—— 「乾癬」の症状があることで、日常生活や仕事をする上で困ったことやつらかったことはありますか?

アンジェリカ病院で受診するまでは、「乾癬」の症状が出ていることを誰にも話していなかったんです。仕事のスタッフはもちろん、家族にさえ隠していました。自分でもどこかで「乾癬」だということを認めたくなかったんだと思います。

だから、仕事のときは、スタイリストさんに「加圧のトレーニングで二の腕にアザができているから、長袖の衣装を用意してほしい」と言ってごまかしたり、ヘアメイクさんには「ブリーチで頭皮が傷んでるから」と、触られないようにして自分で髪の毛をセットして仕事場に入ったり。あのときは、皮膚の病気だということを周りの人に気づかれないように生活することでいっぱいいっぱいでした。

仕事以外でも、皮膚がフケみたいに剥がれ落ちちゃうので黒い服を着られないとか、毎朝通うジムにすっぴんで行けなかったので、早朝から眠いのにファンデーションをがっつり塗って行くとか……。これは本当に気が滅入りましたね。

—— 「乾癬」はその響きから、「感染する/うつる」と誤解されることが多いですが、症状が出ているとき、周りからそのようなことを言われたり、視線を感じたことはありますか?

アンジェリカ直接言われたことはないのですが、やっぱり「乾癬はうつる」と誤解している人がいることは知っていたので、自分も“うつる”と思われているんだろうなって、その前提で日々生活をしていたかもしれない。誰かと会話しているとき、「きっとこの人は私の肌を気持ち悪いと思っているんだろうな」とか、仕事のときも「私ではなくて、乾癬のところを見ているんじゃないか」って。人の視線がそういう風にしか感じられなくなっていましたね。そのときの自分のマインドが一番つらかったかもしれません。

ありのままの自分をさらけ出したら、
目の前が明るくなった

—— SNSでの公表は大きな反響を呼びましたが、なぜ公表しようと思ったのですか?

アンジェリカ毎日毎日ファンデーションで必死に隠したり、スタッフや友人、家族にさえ嘘をつき続けたり、そうやって自分を否定するような生活に自分自身がすごく疲れていって……。そんなとき、SNS上で「肌が汚い」と心ない言葉が書かれているのを見て、ものすごくショックを受けました。それを書いた人はきっと「乾癬」という病気を知らなかっただろうし、仕方がないのですが、どうしてもそのときの私にはその言葉が深く突き刺さってしまって。

それで、もうこのまま隠しているよりも、ちゃんと公表して「乾癬」である自分を受け入れてもらおうと思い、ある種、衝動的に、SNSに投稿していました。

—— 公表後、どのような反応がありましたか?

アンジェリカSNS上や事務所宛てのお手紙で本当にたくさん励ましのコメントをいただきました。中には、60代の男性からの「30年間乾癬で悩んできたけど、君のおかげですごく勇気をもらえた」というお手紙もあって、人生の大先輩がこんな若造の私にそんなことを言ってくださったのは、とてもうれしかったですね。

—— アンジェリカさんご自身は、公表したことで心境の変化はありましたか?

アンジェリカかなり変わりましたね。ありのまま、素の自分でいいんだって、自信がつきました。それこそすっぴんで外を歩くことも平気になりました。「乾癬」という言葉自体にも、「乾癬だから何?」って言えるようになったし、今はもう全然恥ずかしくない。

やっぱり、それまで自分が「恥ずかしい」「いやだ」と思って隠していたものが、パン! ってなくなったから、何というか、道が開いた感じで、目の前が明るくなりました。そう思えるようになったのは、私と同じように「乾癬」で悩んでいる人や、それ以外の皮膚の病気や見た目の病気を持っている方など、誰にも打ち明けられずに悩みを持っているたくさんの方からコメントをいただいたことがすごく大きいですね。私だけじゃないんだなって。そして、私がもっと乾癬のことを広げていけばいいんだっていう自信にも繋がりました。思い切って告白して、本当によかったと思います。

悩みを深めるよりも、
自分の時間を大切にしてほしい

—— 「乾癬」患者さんの中には、今も1人で悩みを抱えている方が多いと思います。公表という一歩を踏み出したアンジェリカさんから、今、どんなことを伝えたいですか?

アンジェリカ「乾癬」っていう病気はまだまだ知られていないし、肌を出すことに抵抗があったり、恥ずかしいって思いはたくさんあったりすると思います。でも、恥ずかしいって思ってほしくない。だって、「乾癬」じゃない人でも絶対に何かしら悩みは抱えているから。私たちはそれが皮膚に出ちゃっているので、人の目が気になるのはしょうがないかもしれない。私もそうだったし。

でも、それを隠して生活して、自分の好きなことを我慢していたらすごく時間がもったいない。自分の人生だから楽しみたいじゃない? だから、恥ずかしがらずに思い切って隠すのをやめて、前向きに生活するのが私は一番いいんじゃないかと思います。

あとはやっぱり、1人じゃないってことを知ってほしい。私もいるし、同じ悩みを持っている患者さんはたくさんいる。自分だけで抱え込まず、理解し合える仲間がいるということを心の拠りどころにしてもらいたいですね。それと、今は治療の選択肢も広がっているので、専門のドクターに相談して、自分のライフスタイルや症状にあったものを都度選びながら、「乾癬」と前向きに付き合っていくのがベストだと思います。

—— では、まだ「乾癬」のことを知らない人に向けて、何を伝えたいですか?

アンジェリカ「乾癬」はどうしても見た目に出てきてしまうものなので、私たち患者にとっては、とても精神的な負荷が大きいんです。だから、この機会に「乾癬」という病気の症状や、「乾癬は感染しない」という正しい情報を知ってほしいなと思います。「うつらないんだ」って頭の中で思ってくれるだけでも、私たち患者の心は軽くなります。そうやって周りの理解が深まっていけば、前向きに、より一層ポジティブに生活できるんじゃないかと思います。