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乾癬にまつわる記事一覧

“つながる”ことで進む、
乾癬と向き合う日常生活

乾癬の疾患啓発プロジェクトは、「乾癬(カンセン)は感染うつらない」病気だという正しい認識を一般に広めることで、患者さんが前向きに社会生活を送れることを目指し、2018年10月に発足しました。

発足1年目は、乾癬をより多くの人に知ってもらうため、来場者参加型のアート作品展示やトークショーなどを開催し、大きな反響を呼びました。

それを踏まえて、2年目の2019年は、乾癬に関する悩みを誰かに打ち明けたい、食事やファッションをはじめとする日常生活での工夫を知りたいなど、乾癬の患者さんの声に応えて、日本乾癬学会、ヤンセンファーマ株式会社、一般社団法人INSPIRE JAPAN WPD 乾癬啓発普及協会(以下、INSPIRE JAPAN)の共催により、等身大の乾癬を語り合うSALONイベントを企画しました。同年11月1日、その第一回目が東京・渋谷で行われ、100人以上が集まりました。

イベントには、乾癬の専門医をはじめ、ファイナンシャルプランナー、管理栄養士のほか、INSPIRE JAPANが登壇し、乾癬への向き合い方、治療費や食事、ファッションなど、患者さんが抱える日常生活の悩みや疑問についての議論が繰り広げられました。

仲間・治療・情報とつながる大切さ

イベントは「乾癬と共に歩む」をテーマにしたトークセッションからスタートしました。お話してくれたのは、NTT東日本関東病院皮膚科部長の五十嵐敦之先生と、INSPIRE JAPAN の山下織江さんです。10代という多感な時期に乾癬を発症した山下さんは、これまでにさまざまな悩みを抱えてきたと話します。

一般社団法人INSPIRE JAPAN WPD 乾癬啓発普及協会の山下織江さん

一般社団法人INSPIRE JAPAN WPD 乾癬啓発普及協会の山下織江さん

山下さん「一番辛かったのは、やはり見た目の問題です。発症当時はおしゃれをしたい年頃でしたが、頭からフケのように鱗屑(りんせつ)が落ちてくるので、人目がいつも気になってとてもファッションやヘアスタイルを楽しむ気持ちにはなれませんでした」

五十嵐先生「乾癬はボディーイメージを非常に損ないます。山下さんのように頭皮の鱗屑や、爪に症状が出ている患者さんは、買い物でお金を出す時や人と握手する時などに躊躇されているようです。他人からどう見られているのか、患者さんは視覚的な面でコミュニケーションに悩まれている方が多いと思います」

NTT東日本関東病院皮膚科部長の五十嵐敦之先生

NTT東日本関東病院皮膚科部長の五十嵐敦之先生

今でこそインターネットでさまざまな情報を得られるものの、山下さんが発症した当時は乾癬にまつわる情報を得る手段や、症状のことを話題にできる場が少なく、「他の患者さんはどうしているんだろう? 誰に相談すればいいんだろう……」と不安を募らせ、内にこもっていたこともあったと話します。そんな山下さんの支えになったのが、患者会でつながった同じ乾癬患者さんのリアルな声でした。

山下さん「私は若い頃に乾癬を発症したこともあって、悲しいのですが乾癬のある肌に慣れてしまい、自分がどこまで良くなれるのかというイメージがなかなか持てませんでした。それが、患者会を知り、そこで出会った同じ患者さんの治療体験など“生の声”を聞くことで、具体的に治療のステップをイメージして、その上で自分に合った治療法を選択することができました」

五十嵐先生「乾癬の治療法はこの10年間で進歩し、毎年のように新しい治療法が確立されています。その意味でも、正しい情報につながることで治療の選択肢が広がることを知っていただきたいですね。疑問点があれば、我々医師に相談してください。悩みを打ち明けるだけでも、精神的な負担は軽くなるはずです。医師と患者さんがつながることで、自ずと答えが見えてくることもあります」

山下さん「乾癬患者さんは見た目の問題で引きこもりがちです。そうすると、正しい情報や治療にアクセスできず、治療をあきらめてしまったり、ストレスで乾癬を悪化させてしまったりすることがあります。そうならないためにも、今日のこういったリラックスできるような空間での情報交換や、つながりをつくるためのネットワーキングの場がとても大切です。仲間とつながる、治療とつながる、情報とつながる——。決して一人ではありません。悩みを抱え込まず、手を取り合って本音で話していきましょう」

東京で開かれたイベントの様子

東京で開かれたイベントの様子

乾癬患者さんの声から生まれた
「FACT FASHION」

イベント後半は、乾癬患者さんが日常生活を送る上で特に悩みを抱えている「お金」「食生活」「ファッション」についてテーマ別トークセッションが繰り広げられました。お金と食事については、こちらのページをご覧ください。ここでは、このプロジェクトの一環として新たに発足した「FACT FASHION(ファクト ファッション)」をご紹介します。

「乾癬の肌が見えるのが嫌だから、夏でも長袖・長ズボン」
「鱗屑が目立つので黒い服が着れない」
「乾癬が出ている部分と服がすれてかゆい」

これらはすべて乾癬患者さんが衣服について抱える代表的な悩みです。ヤンセンファーマは、患者さんがより充実した生活を送るための課題に向き合う中で、ファッションについての悩みが大きいことに着目しました。「FACT FASHION」は、そうした患者さんの“FACT(真実)”を集めて、悩みを解消することに加え、アパレルというツールで広く乾癬を知ってもらい、誤解や偏見の解消、ひいては患者さんの精神的な負担解消につなげたいという目的で生まれました。

ヤンセンファーマの思いに賛同し、「FACT FASHION」のパートナーとしてタッグを組むことになったのが、クリエイティブな視点で環境問題や社会課題の解決を目指す「リバースプロジェクト」です。共同代表の亀石太夏匡さん、アイテムの企画・デザインを手がけたプロデューサーの藤澤はるかさんから、この取り組みへの想いが語られました。

「リバースプロジェクト」共同代表の亀石太夏匡さん(右)とプロデューサーの藤澤はるかさん(左)

亀石さん「今回お声がけいただき、乾癬患者さんのお話を聞く中で、洋服選びに苦労されたり、悩まれたりされている方が想像以上に多いということを初めて知りました。私たちが持つクリエイティブの力で少しでも軽減できるのではないかと思い、微力ながら協力させていただくことになりました」

藤澤さん「『FACT FASHION』をスタートするにあたり、大事にしたいことが二つありました。一つは、患者さんの声をたくさん聞くこと。もう一つは、患者さんが求めている機能性を担保するのはもちろん、ファッション性、着る・選ぶよろこびのあるものをつくることです。実際にお話を聞くと、鱗屑や皮膚症状が人の目に触れるストレスと、衣服と皮膚がすれてしまったり、塗り薬が服についてしまったりという物理的な悩み、その両方を抱えていることを知りました」

こうした患者さんの“FACT”を集めて完成した試作品16点が、“FACT FASHION LABORATORY”として会場でお披露目されました。例えばシャツは、襟元と袖口の内側が肌触りのいい素材になっていたり、薬剤の油分が染み込まない防油加工の生地が使われていたりと、シンプルなデザインの中に患者さんの悩みに答える細やかな工夫が施されています。

試作品が並ぶLABOコーナーには、来場客からさっそくさまざまな“FACT”が寄せられ、この取り組みへの期待が感じられました。

藤澤さん「今回ご紹介させていただいたアイテムはあくまで一例。今後も乾癬患者さんの悩みや要望など、より多くの“FACT”を教えていただき、もっとよろこんでいただけるものをつくっていきたいですね」

立場の垣根を越えた“つながり”が
生まれた1日

イベントの最後には、参加者全員でのネットワーキング(交流会)が行われました。来場者の中には、藁にもすがる思いで乾癬の情報を知りたいと思って足を運ばれた若い患者さんや、乾癬を患ったご家族を支えたいと知識を得るために参加した方などが多く、登壇した医師やINSPIRE JAPANのメンバーらと、熱心に語り合ったり、悩みを打ち明けたりする姿が見受けられました。

さまざまな立場の人が集い、乾癬をオープンに語り合う場となった今回のイベント。今後も各地での開催を予定しています。遠方でなかなか参加できない……という方は、こちらのウェブサイト上でもイベントの様子や乾癬患者さんに役立つ情報を発信していくので、ぜひチェックしてみてください。