総合監修:社会福祉法人聖母会聖母病院 皮膚科部長 小林 里実 先生

掌蹠膿疱症を知ろう
掌蹠膿疱症の治療法
掌蹠膿疱症のQ&A

掌蹠膿疱症を知ろう

悪化因子の除去などについて

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扁桃炎や歯周炎などの治療、禁煙など

扁桃炎や歯周炎などの治療や禁煙をすることで、掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)の症状が良くなる場合があります。
掌蹠膿疱症の原因は、解明されていないことも多く残されていますが、扁桃炎や歯周炎などの感染症[病巣感染(びょうそうかんせん)]がきっかけで発症する例がみられます。そのため、皮膚科だけでなく、耳鼻咽喉科や歯科、歯科口腔外科の医師とも連携して治療を行うことがあります。
また、喫煙は注意すべき悪化因子であると考えられるため、禁煙することも大切です。

※ 体のどこかに慢性の炎症を抱えていた場合、これが引き金となって体の別の部位で何らかの病変(ここでは掌蹠膿疱症)が引き起こされること。他に、病巣扁桃が関わるIgA腎症などがある。

病巣感染の治療

扁桃炎、歯周炎、副鼻腔炎、上咽頭炎といった病巣感染が疑われる場合には、その治療を行います。これらの炎症は、自覚症状がないことも多く、通常であれば治療の対象にはなりませんが、掌蹠膿疱症の症状の発現や悪化に関連していると考えられています。例えば、風邪をひくと膿疱ができたり関節が痛くなるといった経験があれば、主治医に伝えましょう。咽頭・扁桃炎との関与が考えられる場合は扁桃腺の摘出を、歯の根元や周囲の歯周炎などが見つかった場合は歯科治療を行うと症状が良くなったり、治ったりする場合もあります。

禁煙

掌蹠膿疱症患者さんの喫煙率は約80%と高く1)、禁煙により症状が軽減されること2)もあるため、喫煙は掌蹠膿疱症の発症ないし増悪因子と考えられています。歯周炎の悪化因子であることもあり、禁煙することがとても重要です。禁煙外来などをうまく活用して、禁煙にチャレンジしましょう。

1) 日本皮膚科学会ホームページの「一般市民の皆様」>「皮膚科Q&A」>「掌蹠膿疱症」Q9に掲載。
2) Michaëlsson, G., et al.: J. Am. Acad. Dermatol., 54: 737, 2006

歯の詰め物(歯科用金属)の除去

時に、歯の詰め物の金属を除去することで掌蹠膿疱症の症状が良くなることがあります。ただし、歯の詰め物の金属を除去しただけで症状が良くなっている例は実際には少なく3)、歯の根っこや周囲に潜む無症状の歯周炎[歯性病巣(しせいびょうそう)]の治療を同時に行う場合もあります。
金属アレルギーの有無を調べる場合は、パッチテストを行って歯の詰め物に陽性となった金属が使われているかだけでなく、金属を含有する食べ物をとりすぎていないかなども含めて総合的に判断されます。

3) Masui, Y., et al.:J. Eur. Acad. Dermatol. Venereol., 2019 Jan 17. [Epub ahead of print]