総合監修:医療法人桜仁会 いがらし皮膚科東五反田 院長 五十嵐 敦之 先生

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乾癬の治療について

乾癬の治療法は4種類あり、患者さんの状態に合わせて選択されます。治療は納得した上で受けることが重要であるため、患者さんが苦痛に感じる症状や治療目標などについて主治医とよく話し合いましょう。

乾癬治療の種類

乾癬治療法には、外用療法(塗り薬)、光線療法、内服療法(飲み薬)、注射療法の4種類があります。

乾癬の治療には主に、外用療法、内服療法、光線療法、注射療法の4つあります。

外用療法(塗り薬)

多くの患者さんが、まず「外用療法」から治療をはじめます。皮疹に直接薬を塗ることで治療効果を発揮する薬です。免疫の働きを抑えて炎症を抑える「ステロイド(副腎皮質ホルモン)外用薬」、皮膚の細胞に働きかけて異常な増殖を抑える「ビタミンD3外用薬」が用いられます。

光線(紫外線)療法

紫外線が持つ、「免疫の過剰な働きを抑制する力」を利用し、皮疹に紫外線を照射して症状の改善をうながす治療です。UVA(長波長紫外線)を用いる「PUVA療法」、UVB(中波長紫外線)を用いる「UVB療法」や「ターゲット型光線療法」があり、皮疹の範囲に合わせ、紫外線を全身または部分的に照射します。「外用療法」で効果がみられない場合や、皮疹の範囲が広くて薬を塗るのが大変な場合などに行われます。一般に光線療法は、入院で週4~5回、外来で週2~3回の頻度で行われます。

内服療法(飲み薬)

中等症から重症の比較的症状が重い乾癬に用いられます。飲み薬には、角質細胞の異常な増殖を抑える薬、免疫の過剰な働きを抑える薬、炎症を抑える薬が用いられます。単独でこの治療を行うこともありますが、多くは「外用療法」や「光線療法」と同時に行われます。

注射療法(生物学的製剤による治療)

生物学的製剤は、「内服療法」や「光線療法」で、皮膚や関節症状の改善が十分にみられない場合に使用します。免疫細胞の情報伝達に用いられる「サイトカイン」の働きを弱めることで炎症を抑え、皮膚の新陳代謝を調整します。日本皮膚科学会が承認した施設でのみ治療を開始することができます。

乾癬治療法の選び方

乾癬の症状や重症度(「重症度判定について」の項参照)、症状が日常生活に及ぼす影響(生活の質:QOL)、患者さんの状況(年齢や仕事、通院状況など)と、各治療の効果や安全性などを考慮し、最も適している治療法が選択されます。

治療法を選択する上では、患者さんの治療に対する希望、目標も重要になります。納得した上で適切な治療を受けるためにも、日常生活での悩みや疑問はもちろん、「腕の皮疹をなくして半そでが着たい」など、治療に求めることも医師に伝えましょう。

乾癬の治療法を選択する際、乾癬の種類・皮膚症状の程度および範囲・部位の疾患要因、治療効果と安全性・合併症・症状の改善の治療要因、通院頻度や距離・日常生活での支障・治療に伴うストレスの患者要因の3つを考慮し、患者さんのQOL向上を目指します。

乾癬は治る?

乾癬は皮疹が繰り返し出てくる病気であり、根本的な治療法はまだ見つかっていません。しかし、最近では治療法が進歩したこともあり、皮疹がほとんどない状態を長く維持している患者さんも少なくありません。

症状が良くなっている状態を長く維持するには、根気よく治療を続けることが重要になります。また、どういうときに症状が悪化するのかを把握し、生活習慣を見直すことも大切です。

治療方法で疑問がある場合や、自身の症状や状況に変化があった場合は医師に質問・相談し、納得して治療を進めましょう。

参考

  • 1) 古江増隆総編集:皮膚科臨床アセット10 ここまでわかった乾癬の病態と治療, 2016, 中山書店
外用療法(塗り薬)について