総合監修:NTT東日本関東病院皮膚科 部長 五十嵐 敦之 先生

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乾癬の治療法

生物学的製剤とは、化学的に合成した医薬品ではなく、生物が合成する物質(タンパク質)を応用して作られた治療薬で、乾癬に対して効果を発揮しますが、すべての患者さんが使用できるわけではありません。また、日本皮膚科学会で定めた病院でのみ治療を開始することができます
※日本皮膚科学会ホームページ:生物学的製剤承認施設
(https://www.dermatol.or.jp/modules/biologics/index.php?content_id=4)

生物学的製剤は、体の免疫機能にかかわるサイトカインに働きかける薬です。まずは「生物学的製剤」と「サイトカイン」について理解しましょう。

生物学的製剤について

生物学的製剤は、生物が作り出すタンパク質をもとに作られた薬で、皮下注射や点滴で投与され、体の免疫機能などに関わる物質である「サイトカイン」の働きを弱める薬です。

乾癬とサイトカインについて

サイトカインの作用の一つは、細胞から細胞へ情報を伝達することです。わたしたちの体は、数十兆個におよぶ細胞からできており、絶えず増殖や消滅などを繰り返しています。その変化に必要な増殖などの指令を細胞間で伝える役割を担っているのがサイトカインです。

サイトカインは、構造やはたらきによって様々な種類があり、その中にTNF-α(腫瘍壊死因子α)やIL-12(インターロイキン12)、IL-23(インターロイキン23)、IL-17(インターロイキン17)があります。いずれも免疫機能にかかわる重要なサイトカインですが、過剰に増えることで炎症などが起きてしまいます。

乾癬とサイトカインについて

これらのサイトカインは乾癬の症状と関係していることが明らかになっています。何らかの原因によってTNF-αやIL-12、IL-23、IL-17が過剰に増え、乾癬の症状を引き起こすのです。そこで、これらのサイトカインをターゲットにした生物学的製剤が乾癬治療に用いられるようになりました。

乾癬とサイトカインについて

乾癬治療に用いる「生物学的製剤」

現在、乾癬に対して、日本で用いることのできる生物学的製剤は数種類あり、投与方法や間隔など、より患者さんのライフスタイルにあった薬剤を選択できるようになりました。生物学的製剤の選択に当たっては、ご自身の状況について、主治医にお伝えください。いずれも乾癬に関わるサイトカイン(TNF-α、IL-12、IL-23、IL-17)の働きを弱めることで治療効果を発揮します。

乾癬治療に用いる「生物学的製剤」

生物学的製剤の良い面と悪い面

いずれの生物学的製剤も、従来の治療方法では十分な効果が得られなかった患者さんに効果を発揮する治療方法として大いに期待されています。

<生物学的製剤による治療が適応となる方>
◎飲み薬による治療や光線療法を行っても十分な効果が得られない患者さん
◎関節の痛みがはげしい乾癬性関節炎(関節症性乾癬)の患者さん
◎膿疱性乾癬や乾癬性紅皮症などの重症な患者さん

また、ある程度症状が良くなっていても、現状以上の改善を目指したい患者さんにとっても有用です。生物学的製剤が効果を発揮することで塗り薬の量も減るなど、治療のために受ける日常生活の制限が少なくなり、患者さんの生活の質(QOL)が向上することも期待できます。
しかし、生物学的製剤もすべての患者さんに必ず効果があるとはいいきれません。また、副作用が現れることもあり、長期的に投与した場合の影響については不明な点が多いです。日本皮膚科学会では治療指針を定め、これに基づいて生物学的製剤を使用する必要のある患者さんを慎重に選び、何よりも患者さんの安全性を確保した上で、適切に使用するように努めています。皮膚科専門医から正しい知識、正しい情報を得て、従来の治療方法と生物学的製剤を含めた中から、自分自身に最も適切な治療を受けましょう。

生物学的製剤の良い面と悪い面