総合監修:NTT東日本関東病院皮膚科 部長 五十嵐 敦之 先生

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患者さんインタビュー
奥瀬正紀さん[発症から約10年]

乾癬を発症して
〜最初はそれほど大変な病気だとは考えていませんでした〜

奥瀬正紀さん

最初に乾癬のような皮疹に気づいたのは、10年以上前に出張先のホテルでたまたま鏡を見たときでした。左の肩甲骨の周辺に小さな湿疹を見つけました。子どものころから湿疹ができやすかったし、かゆみなどもほとんどなかったため、あまり気にしませんでした。

しかし、背中だけでなくだんだん他の場所にも同じような皮疹がみられるようになり、とくに足やすねにはかゆみなどの自覚症状も強くでるようになりました。かゆみによって仕事ができなくなるほどではありませんでしたが、集中するのが難しかったり、無意識にかいてしまって皮膚片が剥がれ落ちるのが気になったりしました。最初の皮疹に気づいてから2年ほどが経ったころには、皮疹が背中全体にまで広がっていました。そこでようやく、「これはただごとではない」と思い近所の皮膚科を受診したところ、乾癬と診断されました。

すぐに治療を開始したのですが、当時は乾癬の症状がある部分に薬を塗っても、あまり効果はなく、さらに薬を塗っていない部分にも新たに症状がでてくるというように、どんどん広がっていきました。休日などで家にいると、半日ほどで剥がれた鱗屑(りんせつ;肌の表面を覆う白色のかさぶた)が床一面に散らばるため、家族は何も言いませんでしたが、掃除するのは大変だったと思います。オフィスで仕事をしているときも、とくに色が濃い床や絨毯の上では落屑(らくせつ;鱗屑がフケのようにボロボロと剥がれ落ちること)が目立つため、なるべく鱗屑が落ちないように、身体の動きを最小限にするなどして気を遣っていました。爪にも症状がありましたから、名刺交換など手指を出さざるを得ないとき以外は、なんとなく手を組んで人目から爪を隠すようにしていました。これは習慣になっていて、今でも無意識に手を組んでいる自分に気づくことがあります。

乾癬で困ったこと
〜乾癬を理由に行動を制限したくありませんでした〜

子どもが小さかったころ、夏になると海やプールに連れて行ったのですが、人前で背中など乾癬のある場所を出すことにはやはり抵抗がありました。しかし、乾癬を理由に海やプールに行かないのは子どもがかわいそうだと思い、一緒に泳いだりもしました。そのときは、自分が思うほど他の人は自分のことを見てはいないと考えるようにしていたのですが、正直内心では気になっていました。

そんなふうに私は、人目は気になるものの、乾癬を理由に行動を制限するということはほとんどありませんでした。これは、強がっていたわけではなく、周囲の人たちの理解があったのが良かったのだと思います。家族は協力的で、子どもは背中に薬を塗るのを手伝ってくれましたし、会社の仲間も乾癬のことを理解してくれていて、一緒に温泉に行ったりしていました。ただ、頭や顔にも症状があったため、落屑がフケのように見えることが気になり、仕事で着るスーツは明るめのグレーや白っぽい色を意識して選んでいました。

乾癬治療と向き合う
〜乾癬や治療について積極的に調べることが大切だと実感しました〜

奥瀬正紀さん

近所の皮膚科に通院していたころは、乾癬やその治療についてあまり深く考えたことはありませんでした。症状は改善せず、むしろ悪化し続けていたのですが、「治療しなければさらに悪化するかもしれない。だったらこの治療を続けるしかない」と思っていました。「しょせんは皮膚病」と見くびっていたところもあったかもしれません。とにかく自分から病気を治すためにもっと何かしようと思うことはなく、漫然と通院していました。しかし、診断されてから2年ほど経ったころ、当時の主治医から「ここで治療するには限界があるから、大学病院を紹介する」と言われました。このとき初めて「これは難しい病気なのかもしれない」と少し不安になりました。

一方で、大学病院で別の治療が受けられれば、かゆみのつらさ、背中全体に薬を塗る手間、それに落屑や薬で衣服などが汚れたりすることから解放されるかもしれない、とも考えました。そこで、すぐに紹介状を書いてもらい、大学病院を受診しました。大学病院で検査や説明を受けて、乾癬には塗り薬以外にも治療法があることを初めて知りました。残念ながら、最初に追加した治療は効果があらわれにくかったため、半年ほどで別の治療に切り替えました。しかし、私がそれまで乾癬治療に抱いていた「皮膚病だから塗り薬しかない」というイメージは変わりました。もしも、近所の皮膚科に通院していたころにこのことを知っていたら、もっと積極的に症状や治療について医師に相談していたかもしれません。

また、自分でも治療について調べるようになりました。調べるうちに、医師からの説明と併せて、乾癬の治療にはさまざまな選択肢があることが分かってきました。飲み薬のように身体の中からアプローチする方法についても知りました。今行っている治療で効果がなくても次があると思えるようになり、塗り薬しかないと思っていた頃に比べると、精神的にずいぶん楽になりました。

乾癬治療を続けるコツ
〜症状をコントロールできることが分かり、乾癬と前向きに付き合えるようになりました〜

乾癬を発症して約10年経ちますが、受けられる治療は一通り試してきました。改善したこともあれば、悪化したこともあります。

残念ながら、今はまた少し調子が悪くなっていますが、以前と比べると少し楽観的でいられます。今は治療の選択肢が複数あることを知っていますし、いろいろな治療を受けた経験をもとに現在の治療に納得しているからだと思います。

以前に症状がほとんどなくなり、塗り薬すら必要ない状態を経験したことも楽観的でいられる理由の一つです。このときは、手や爪、背中などを人目から隠す必要もなく、服の色も気にせずにすみました。何かするときに全く乾癬を気にする必要がないという感覚は非常に楽だし快適でした。この経験から、乾癬は、完治はしないかもしれないけれど、治療によってかなり良い状態にまで改善することが可能だと分かりました。医療が進歩してより良い治療法がでてきたら、さらに症状が改善するかもしれません。

もちろん、長く乾癬と付き合っていると、治療を続けるのが嫌になることがしばしばあります。「少しくらい治療をしなくても違いはないのでは」と思ったりもします。しかし、忙しいときなどに1~2日薬を塗れないと、やはり症状は悪化してしまいます。そのため、一定の状態を保つことが、治療を続けるモチベーションにもなっています。乾癬は、きちんと治療を続けることで、症状をある程度コントロールできる病気です。今の状態よりも悪くなるのを防ぐためにも、根気強く治療を続けることが大切だと思います。

最後に
〜乾癬があってもなくても、いつも前向きでいたいと思っています〜

乾癬を悪化させないために、治療以外でも工夫できることがあります。例えば、乾癬が悪化しそうな状況をあらかじめ避けることもその一つです。私の場合は、睡眠時間が短くなるなど不規則な生活が続くと皮膚の状態が悪くなるので、できるだけ規則正しく生活できるようにスケジュールを調整して、体調を保つよう心がけています。

乾癬のことを相談できる人の存在も重要です。乾癬は長く付き合っていかなくてはならない病気なので、1人で悩むのはつらいし大変です。例えば家族や友人で、乾癬のことを話せる人が1人でもいると気持ちが楽だと思いますし、身近なところで見つけるのは難しいかもしれませんが、患者会などで同じ乾癬の仲間と相談しあうのも良いかもしれません。

医師とのコミュニケーションも大切だと思います。皮膚の状態は見せるだけである程度分かってもらえますが、個々の事情や治療に満足しているかまでは伝わりません。自分に適した治療を受けるためには、分からないことや困ったことをきちんと伝えることが重要だと思います。

私は何事もポジティブに考えるようにしています。乾癬に限らず、嫌なことがあって落ち込むこともありますが、毎日を前向きに楽しく過ごしたいと思っています。乾癬に関しても、将来もっと新しい治療が見つかるかもしれない、もっと良くなる可能性がある、と期待しながら、上手く乾癬と付き合っていきたいですね。

奥瀬さんの「乾癬による影響チェック」の結果

奥瀬正紀さん