総合監修:医療法人桜仁会 いがらし皮膚科東五反田 院長 五十嵐 敦之 先生

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患者さんインタビュー

下藪居一敏さん[発症から約30年]

乾癬を発症して 〜なかなか症状が改善せず、医療への不信感が募りました〜

下藪居一敏さん

最初に違和感を覚えたのは18歳、高校3年生の時です。首の後ろに痒みとも痛みともつかない感覚があり、無意識に何度も首筋を触っていたのを、当時お付き合いしていた女性に指摘されて気付きました。その頃は簡単に写真が撮れる携帯電話やスマートフォンはなかったので自分では見ていませんが、彼女によると、剥がれかけたかさぶたのようなものがあったそうです。彼女がかさぶたを引っ張ると、500円玉大の皮膚が「ベリッ」と剥がれたので、とても驚いていたことを覚えています。

その女性の勧めで近所の皮膚科を受診したところ、若者に多い「脂漏性皮膚炎(湿疹)」と診断されました。処方された塗り薬をこまめに塗っても一向に改善せず、やがて肩、腕、膝、胸部、腹部にも広がっていきました。このまま様子を見ても治りそうにないと思い、大きな病院で組織検査をしたところ、ようやく「尋常性乾癬」と診断されました。首に病変を見つけてから半年以上経ち、大学生になっていました。

医師からは命にかかわる病気ではないと言われたものの、乾癬という見たことも聞いたこともない病気になったことに、強い不安がありました。周囲に同じ病気の患者さんはおらず、現在のようにインターネットで気軽に調べることもできませんでしたから、誰にも相談できず孤独でした。また塗り薬中心の治療だったのですが、現在のように塗りやすいリキッド状やクリーム状のものではなかったため、特に夏場は全身がベタベタして非常に不快でした。それにもかかわらず塗っても塗っても皮膚の症状は広がる一方で、次第に薬を塗るのが面倒になってしまい、病院からも足が遠のくようになりました。病気への不安に加え、治療にも効果が感じられなかったことで、医療への不信感が募っていた時期でした。

乾癬で困ったこと 〜人目が気になり、周りからの親切も重荷に感じていました〜

腕や胸に症状が現れるようになってからは、半袖を着るときに人の目が気になるようになりました。それでも学生の頃は、Tシャツを着るときは袖から出る部分に包帯を巻き、知人に「どうしたの」と聞かれると、「ちょっと腕に怪我をした」と答えるなどしてごまかしていました。乾癬を知らない人からは落屑(らくせつ;乾いた皮膚がフケのようにボロボロと剥がれ落ちること)がフケのように見られるため、不潔にしていると思われるのが心配になり、首や頭皮にまで症状が広がったときには色の濃い服が着られなくなりました。社会人になってからは、落屑が肩から滑り落ちやすくなるよう、スーツやジャケットの素材にも気を遣うようになりました。また、顔などの隠せない部分の病変があると、知人から健康食品を勧められたり、知らない人から「どうしたの」「熱湯でもかけられたの」と声をかけられたりして閉口したこともあります。そのようなことが煩わしく、人付き合いや外出が億劫になった時期もあります。

乾癬の病変には痛みはありませんが、冬の乾燥しやすい時期はあかぎれのようになり、ちょっとしたことで皮膚が割れて出血することがあります。自分では軽く膝をぶつけたくらいに思っていたのに深く割れてかなり出血したことがありました。すれ違った人から「足、怪我でもしたの」と声をかけられ、そこでようやく膝下が血だらけになっていることに気付いたこともあります。

乾癬治療と向き合う 〜乾癬と向き合い、今度は他の患者さんの役に立ちたいと思うようになりました〜

下藪居一敏さん

20代前半からの約10年間は、民間療法を試したり、スポーツジムに通ったりと、出来るだけ医療機関には頼らずに試行錯誤していました。スポーツで体重が減ったお蔭なのか何が功を奏したのか分かりませんが、一時的に症状が改善したこともありました。しかし、35歳頃には目の周りを除く全身に症状が広がり、見かねた妻がインターネットで乾癬に詳しそうな病院をいくつか選んでくれました。私自身は治療に疲れていて積極的な気持ちにはなれなかったのですが、妻に「駄目でもいいじゃない」「行ってみよう」と背中を押され、その中の一つを選びました。それが現在通院している病院です。

そこで初めて塗り薬以外の薬を処方され、半袖を着られるほどに改善しました。10余年ぶりに半袖を購入し、袖を通したときの喜びは今でも忘れられません。塗り薬の量が減ったのも嬉しかったです。その薬は効果があったものの身体には合わず止めることになりましたが、その後2種類ほど別の薬を試して今使っている薬に出会い、ようやく病気をコントロールできていると感じられるようになりました。

患者会のことは、主治医に紹介されて知りました。同じ乾癬の患者さんが大勢いて、当たり前のように乾癬の話ができて、乾癬患者としての悩みを分かち合えたことは、それまで乾癬患者は世の中で自分一人のように感じていた私にとって、乾癬と向き合う大きなきっかけになりました。

乾癬と向き合えるようになると、「今度は救う側になりたい」と考えるようになりました。自分自身も覚えがあるのですが、病気が悪化すると落ち込みやすく前向きに考えられなくなり、医師の指示を守らなくなりがちです。そんなときに同じ境遇にいる者として、乾癬患者さんを元気付け、前向きに乾癬と付き合い続ける手助けをしたいと思ったのです。そこで、カウンセラーになるための勉強を開始し、資格を取得しました。いまも継続して勉強中です。

乾癬治療を続けるコツ
〜医師と相談しながら、気負わず気長に治療を続けることが大切です〜

乾癬患者さんの話を聞いていると、比較的軽症で乾癬を発症したばかりの患者さんが完治を目指して様々な治療法に興味を示すのに対して、重症で乾癬歴の長い患者さんは、乾癬では重症度が高いほど選択肢が多くなるにもかかわらず、治療自体をあきらめているように感じます。長い闘病生活に疲れてしまって前向きになれず、「どうせまた効果がないだろう」と考えてしまうのだと思います。しかし、今は様々な治療法があり、その治療選択肢の中に合う治療法があるかもしれませんし、これから新しい薬が増える可能性もあります。昔と比べて塗りやすい塗り薬も開発されています。患者会などで情報を集めたり、他の患者さんに相談したりしながら、あきらめずに根気よく治療を続けることが大事だと思います。私も、何度も薬を変えて、今は症状が落ち着く治療に出会えました。しかし、身体の一部には症状が残り、関節症状で腕が上がらないなどの不便もあります。それでも、病気と伴走する気持ちで、乾癬と気長に付き合って行くつもりです。

医師との良好な関係も、根気よく治療を続けるために重要だと思います。患者さんは「こんなことを言ったら失礼かも」「変わりないって言っておこう」と遠慮しがちですが、「この薬は効果が感じられない」「自分には合わない」「処方された塗り薬はベタベタするので使いにくい」など、思っていることや感じていることをきちんと医師に伝えるべきです。医師も患者さんが何に困っているのかを理解できると、別の選択肢を提案しやすくなると思います。患者さんと医師が問題を共有し協力し合うことで、治療を円滑に進められるようになるのだと思います。

最後に 〜頑張り過ぎない「いい加減(良い加減)」を心掛けています〜

私は、「乾癬だから気を付ける」ということを作らないようにしています。なぜなら、それ自体がストレスになってしまいそうだからです。患者会などで色々な方から相談を受けるのですが、物事に真摯に向き合う人ほど、ぶつかる壁を大きくしているように思います。そのような方には、様々な角度から問題を検討して、上手い逃げ方を考えたり、問題に対する考え方を変えたりすることを提案しています。頑張り過ぎずに「いい加減(良い加減)」に頑張るのが、無理なく治療を続ける秘訣だと思います。

下藪居さんの「乾癬による影響チェック」の結果

下藪居さんの「乾癬による影響チェック」の結果